後藤光代

「アルコール依存症の詩」

ご主人の死亡を知らせた通知文(左写真)から

■後藤勝利(1938-2005)
緑豊かな足助の山中に生まれ育った勝利は20代の頃は山登りに熱中した。そんな山巡りの中、上高地の帝国ホテルと出会い、強い感銘を受けた。また無類の酒好きであり、大のコーヒー党でもあった勝利。酒が飲めなくなった最晩年は、コーヒーを喫むことをなによりの楽しみとしていた。

■このコーヒーカップは勝利の憧れだった帝国ホテルが、東京で開業した際に設計を担当したフランク・ロイド・ライトのデザインによるものです。明治の開業当初は実際に使われていました。

■現在は勝利の愛した地元・名古屋が世界に誇る一流食器メーカー・ノリタケが自慢のボーンチャイナで復刻しています。

■同梱のコーヒー豆は炒りたてのものをお付けしましたが、時節柄どうしても風味が落ちやすくなっています。せめて香りだけでもお楽しみいただければと思います。


「アルコール依存症の詩」目次 

はじめに 

第一章 アルコール依存症の詩
   かけがえのない家族たち
   クラス会事件
   アルコール依存症の夫がセミナーに参加してくれた
   初めてのセミナーに参加してから……
   私の家出
   私は、この地で生まれ変わることができました、ありがとう
   私たち夫婦には、宝物の友人がいます
   こんなにいい日が来るなんて……
   お別れ
   密 葬

第二章 私のセミナー体験
   他力どっぷりの自分
   素直とは
   許すとは
   苦しみは愛でした
   言葉は変る
   今、私を振り返れば……
   アルコール依存症の詩

おわりに

 

本文の一部

今、私を振り返れば……

アルコール、つまりお酒を、あなたはどう思いますか。
私は、お酒を憎んできました。
お酒漬けの夫を憎んできました。
お酒が憎いのか、夫が憎いのか、そのどちらも憎いのか自分でも分からないくらい、すさまじいエネルギーを流し続けてきました。
「そのすさまじいエネルギーがあなたですよ。そのことに気付きなさい。」
夫のアルコール依存症が、自分に自分が伝えるメッセージであったなどとは、おそらく、心を見るという学びに繋がらなければ、絶対に思いもしないことだったと、私は思っています。
学びに繋がって、地獄に仏の言葉通り、地獄のような日々の中で、確かに人の優しさやありがたさを、私は身に染みて感じてきました。
確かに、人はひとりでは生きられないなあ、みんなに支えられて、助けられて、今の私たちがあったんだ、ありがとう、ありがとうという思いは、心に湧いてきます。
それは、それまで、私自身、あまりにも暗かったし、あまりにも己が正しくて、己が偉くてどうしようもなかった自分なのに、そんな自分でも、こんなに人の優しさに出会わせていただいて、ありがとうございますという思いに過ぎないものかもしれません。
今の私は、幸せなんです。
自分のすさまじいエネルギーを周りにぶちまけてきた結果が、これまで自分自身が味わってきた苦しみ、悩み、憂いだったことを、私はほんの少し感じているからです。
夫ではなかったし、子供でもなかったのです。
やはり、彼や彼女たちは、私にとってはかけがえのない家族でした。
遅まきながらも、今、このように自分を振り返るチャンスを自分で作り、そのように思えるから幸せなんです。
アルコール依存症の夫が、酒を絶ってくれたなら、私は幸せになれる、万事うまくいく、そう思い込んで、そのために東奔西走してきた自分でした。
精一杯生きてきたと自画自賛してきたけれど、結局、私は、一番大切なことを見落として頑張ってきたのです。
自分が頑張ることが、さらに新たな苦しみを生んでいくとは、私には、なかなか分かりませんでした。
いいえ、内心は少し学びの本質に近づいてきたかなあなんて、また己の偉い部分が飛び出してきますが、今は、「そんな私もみんな受け入れだよ」って、自分に言ってやれる余裕が出てきています。
夫の心の叫び、そして、自分の心の叫びを真正面から聞く優しさに欠けてきた自分でした。
ただ、酒が好きなだけ、そう夫に言わせるその心の底をくみ取る優しさに欠けていたのでした。
それでも、今はまだ、学びで得た知識の域を超えていないでしょうが、しかし、私は、私に残された時間、苦しみもがいてきた自分のために、誠実に生きてみようと、今、決意を新たにしています。
自分がまず幸せだったと気付くこと、何がなくても、もう自分はすでに幸せだったことに気付くこと、これでした。
幸せになろうではなく、幸せにしてくださいではなく、私は幸せな存在でしたと、ほんの少しでも心で感じられて、そして、私の人生の幕引きができれば最高だと思っています。
人って優しいなあ、私って優しいなあ、チラリとでも本当にそのように思える日が来るのを楽しみに、日々を過ごしてまいります。

アルコール依存症の詩 募集要領
販売価格

1,260円(税込、送料別)

体  裁
四六判 並装
発行日
2008年9月 発売中!
ご予約は
ここをクリックしてください!